病夫に化身した薬師如来が行基の精誠の道心を知るための方便でいろいろな難題を与えた。その結果、認められ有馬のふもとの温泉の窟に行って、湯の山を開基して、末世の衆生の為に病痾の苦痛を助けよと言って姿を虚空に消えてしまった。そこで行基は仏のお告げに任せて有馬山の温泉の窟に行き、山を穿つったり、岩をくずしたりて湯脈を探りあてる。そこに石物を祀り、奉行如法経を書写して、温泉の底に埋めて、一切衆生諸病滅除の誓祈をたてるなど念入りに行い,そのため貴賤万民の抜苦与楽の聖地となり是より、三百七十年温泉が繁盛したという。ところで病夫に与えた半肉の魚をこやの池に放ったところ、たちまち金魚となって淵で喜び泳いだという。しかしこの池に住む魚はことごとく片目であると言い伝えられ、しかもこの魚を食べると癩病なるといわれ、だれも食べる者はいなかったという。次回第5回のくずし字解読講座は、その後、洪水で温泉が壊滅状態となり九十五年間荒れてしまうが、仁西上人が不思議な夢を見て再建をする話になります。